しろ(46)の日に初チャレンジ! 社員が教える、美味しい飲み方のススメ。

みなさま、本日4月6日は「白岳しろ(46)の日」です!

しろ(46)の日を記念して、高橋酒造のスタッフが日頃自分たちだけで楽しんでいる焼酎の飲み方やおすすめのペアリングをHAKUTAKE ONLINE SHOPにて紹介することにしました!

百聞は一見にしかず。
まずはスタッフ記事をご覧ください!
今回は春にピッタリの飲み方を紹介中です♫

https://hakutake-shop.jp/view/news/20210406120008

第197回 哀しきアムネジア

 最近は、どうも物忘れがひどくなった。人と話をしていて固有名詞が出てこない。俳優や歌手、政治家、ひいては歴史上の人物まで。口許まで出かかっているのだが、言おうとするとどうしても口に出せない。だから、仕方なく「あ・れ・だよ。あれ。あれ」と言ってしまう。場所なら「あそこだよ。だいぶ前に行ったとこ」俳優なら「あの人だよ。よく悪役もやる。あ・の・人」といった感じ。気心の知れた人だと、うまく会話の流れをつかんで「あ、カレーのうまいの食べたところだね。わかる、わかる」という具合に察してくれる。正解は出てこなくても、その場は何とかやり過ごせる。喉元に引っかかったままなのだが、ある瞬間にふっと声が聞こえることがある。そうだったんだ。なんで、こんな簡単なこと思い出せなかったんだろう、と自分が嫌になってしまう。
 固有名詞が思い出せないだけではない。日常生活でも、影響は確実に現れている。
 最近、本を読んでいて活字が読みづらくなった。字のまわりが滲んだように見えるのだ。「老眼鏡を使ってみたらいいと思う」と薦められ、かけるようになった。
 そのとおりだった。劇的に視界が明るくなった。仕事は事務でパソコンを使わず手書きでやっている。だから、仕事にも老眼鏡は効果を上げている。使い始めてよかった。薦めてくれたことに感謝している。
 だが、私はいつでも老眼鏡をかけるわけではない。映画を観に行くときや、テレビを見るときはメガネを使わなくて済む。
 そこで大変なことが起こる。テレビでニュースを見てから書斎へ戻る。そして本を取り出したときに問題は起こる。
 机の上に眼鏡がない。煙のように消えている、あれ、さっき本を読んでいたときは、たしかにここで使っていた。
 それが今はなくなっている。あわてて机のまわりを見る。
 ない。
 机の下も見る。ない。机の横の隙間も覗き込む。ない。ひょっとしたらテレビを観るときに無意識にはずしたとか。
 テレビの部屋に行き隅から隅までチェックするが、ない。消えてしまったのだろうか、とも思う。まるで魔法のように。「そんなときは、顔でも洗ったらいい。ふふ」
 そして、ふと洗面所の鏡の前に着いたときに、眼鏡のありかを知らされることになる。
 老眼鏡は、頭の髪の上にかけられたままになっていたのだ。いくら部屋の中を探しても、出てこないわけだ。
 へなへなと崩れ落ちてしまう。
 きっと、老眼鏡をテレビを観るとき頭にかけたのは、無意識だったのだろう。自分が悲しくなる。似たようなことは携帯電話でも起こる。帰り着いて携帯電話を取り出そうとしてないことに気づく。さんざん部屋中を探すが見つからない。もちろん、バッグの中も探す。出てこない。ひょっとしたら、出先に置き忘れてきたのだろうか?行った先やタクシー会社に電話するが見当たらないという返事が。途方に暮れる。「固定電話から携帯電話にかけてみたらいいよ」といわれる。
 そうだ。その手があったか。あわてて電話してみる。すると…電話の呼出音が鳴り響く。
 なんと電話は私が帰ってきて置いた帽子の下にあった。携帯電話を置いてその上に帽子を無意識にかぶせてしまったらしい。
 冗談にならないくらい物忘れはひどくなっている。健忘症という言い方がある。健やかな物忘れ病となるが、私のじゃない、私のは妄忘病くらいが正しいかな。昨年もそうだ。昼食を終え、仕事場に戻り午後の仕事を始めた。書き損じが出たのであわてて消しゴムで消す。大量の消しカスが出たので、机の上をきれいにするために消しカスを吹く。
 不思議だ。消しカスはそのままだ。首をひねる。「はめたままじゃないか」と言われる。
 なるほど。外出から帰ってからマスクを外さないままでいたのだ。消しゴムのカスが吹き飛ばせない理由がわかった。
 どれも、自分の物忘れが原因だ。
 しかし、いつもかろうじてのところで、大事なことをアドバイスしてくれることに感謝している。やはり持つべきは家族だな。
 その家族が今日は揃ってやってきた。ときには、単独ではなく家族全員で行動することも必要だろう。妻と娘は手分けをして掃除にいそしんでいる。二人が協力しあって作業しているのを見るのは気持ちがいい。母は、その様子をにこにこ笑いながら眺めている。頼まれていたものがやっと揃ったらしく、息子が遅れて到着した。「お待たせぇ。途中、道が混んでいてさぁ」
「さぁ、掃除も終わったし、全員揃ったから」と私はみんなに言った。ライターを探す。あれ?ライターを持ってきた筈なのに。ポケットに入っていない。どうしよう。「ライターなかったから、マッチを持ってきたんじゃないか」といつものように教えられる。その通りだ。小物を入れるバッグの中にマッチを入れてきたのだった。すんでのところでいつも父のアドバイスに教えられる。「始めようか。花を飾って、線香とロウソクに火をつけて」
 そこで、あれ?と思う。なぜ、父が教えてくれるんだ。不思議だ。
 今日は、父の一周忌で家族揃っての墓参りだったのではないか。
 どうも、最近は物忘れがひどくなったなぁ。自分のことながら、呆れるしかない。

第196回 世の中リモコン

 歩いていると、不思議な老人がいる。存在感がないというか、透明っぽいというか。「おかしいなぁ?ここいらと思うんだが?」と呟いている。通り過ぎて振り返ると老人はしきりに道で何かを探しているようだ。
 落としもの?と首をひねったとき街路の脇の溝に黒っぽい装置のようなものが落ちているのを見つけた。ひょっとしたら、さっきの老人は、これを探していたのではないだろうか?
 あわてて拾いあげて老人に教えてやろうと見ると、老人の姿は薄くなり、消えてしまった。いったい何者だったのか?
 黒っぽい装置は長さ20センチほどの板状の物体だった。左上に赤い丸が一つある。その下にいくつものボタンがならんでいた。そのボタン一つずつに意味があるのかもしれない。表示がないからわからないが。
 老人が見えたあたりまで戻ってみたが、もう姿がない。目の錯覚でなければ、薄くなって本当に“消えた”のかもしれない。
 いったい何者だったのだろう。
 そのまま会社に戻った。今日は終業まで営業会議だった。思ったような成績をあげられていないから気が重い。正直、会議も出たくない。成績アップがテーマの会議なのだ。
 会議が始まり、課長がそれぞれに意見を述べさせる。いらいらしながら順番を待つ。早く終わればいいのに、と、手に持っていた黒い装置を握りしめた。
 どうしたことか、課長が甲高い声でチャカチャカ話し始めた。慌てて手を離すと、話が正常になった。
 この装置のせいだ。
 会議は続く。次があてられ意見を述べたが、つまらない、と課長に罵倒された。
 次にこちらを指差した。なにもアイデアはない。脂汗がにじみ装置を握ると、会議の出席者がいっせいにフリーズした。
 この装置のせいなのか?
 課長はこちらを指差したまま静止。他の課員もつまらなさそうに止まったままだ。
 わかった。この細長い黒い装置は世の中のリモコン装置なのだ。そして今押したのは“一時停止”。さっき、課長がものすごい勢いで話しだしたのは“早送り”か。いや“1.3倍速再生”なのだろう。立ち上がって課長の前に置かれた用紙を見ると「試みる手法案」が箇条書きにしていくつもあげられてる。あわててそれを写して席に戻り装置を動かす。
 世の中がまた動き出した。
 立ち上がって、今メモしたものを読み上げて「以上のようなものを打開策として申し上げます、これらを一つづつ実施していくことが有効かと思います」
 席に座ると、課長はぽかんと口を開けてこちらを見ている。先に結論を言ってしまったので、早々に会議は終わってしまった。
 終業時間まで早送りして帰りたかったのだが、どれが早送りボタンなのかがかわからない。
 定刻で終業して家に帰る。
 帰り道にぼんやりと考える。あのリモコンを落とした老人は、いったい何者なのだろう?
 ひょっとしたら神さまなのかもしれないなぁ。そして、この世の中を操作しているのかも。
 家に帰ると妻に文句を言われた。頼まれていた買い物を忘れてしまったからだ。妻の小言に耐えていると、持ち帰ったリモコン装置が目に入った。そして、その斜め前には我が家のブルーレイディスク用のリモコン装置がある。その2つを見比べて気がついた。
 なんと、テレビやブルーレイのリモコンと私が拾って持ち帰ってきたリモコンのボタンの配列はまったく同じなのだ。ということは…。
 ブルーレイリモコンの早送りの位置にあるボタンを試しに押して見る。すると妻の小言がすごい勢いで進み、あっという間に終わってしまった。これだ、これだ。
 ブルーレイのリモコンの方には操作方法がすべて表示されていた。同じ位置のボタンを押せば、世の中も同じように操作できるのだ。しかし、今の生活は同じことの繰り返し。いい加減飽き飽きしてきたぞ。このリモコンで、もっと刺激のある生活はできないものだろうか?
 ぼんやりとそう思うようになった。ブルーレイリモコンに細長い“チャンネル”というボタンがあった。では、こちらの方の同じ位置にあるボタンを。
 エイッ。
 うわっ。目の前の世界が消え去る。ここは密林の中か。遠くから獣の吠える声がする。そして地響き。近づいてくる。巨木の間から出現したのは恐竜だった。あわててボタンを押すと、部屋の中だ。半裸の美女がソファーの私に飲み物を差し出す。これだよ。この世界だ。いつまでもこの世界が続いてくれればいい。「もうお別れなの。残念だわ」と美女が言う。いやだ、行かないでくれ。この世界がいい。と“停止”位置のボタンを押すと世界が凍結してしまった。世界は変化しないが、何も動かない。どうすれば元に戻る?いろんなボタンを押してみたが、凍結した世界が元に戻ることはなかった。あとは、リモコンの左上にある赤いボタンしかない。
 仕方ない。その赤いボタンを押してみると、世の中のすべてが真っ白く……消え

人吉球磨アンバサダーズインタビュー第3弾|発酵デザイナー、小倉ヒラクさんのインタビューを公開!

“ソーダ割りやショートカクテルとかも合うでしょうね”

銀しろが入った盃を傾けながらそう語るのは、発酵デザイナーの小倉ヒラクさん。
「人吉球磨アンバサダーズインタビュー」、3人目のアンバサダーです。

ヒラクさんの肩書きは、まだ日本では耳慣れない「発酵デザイナー」。
ヒラクさん曰く、発酵デザイナーの仕事とは、「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」こと。全国の醸造家や研究者たちと発酵・微生物をテーマにしたプロジェクトを展開しながら、発酵の持つユニークな一面や奥深さを、デザインという媒介を通じて表現するクリエイター兼ディレクターです。

もともと、アートディレクターとして国内外で活躍していたヒラクさんでしたが、ある機会に発酵食品ができる仕組みに強い興味を持ち、独学で勉強を開始。
2019年に渋谷ヒカリエで開催され、5万人の来館者を集めた展覧会「発酵ツーリズム」や2020年4月に東京・下北沢にオープンした発酵食品のセレクトショップ「発酵デパートメント」など、発酵の世界を彩る独自のコンセプトをデザインしつづけています。

サイトでは、2020年9月に豪雨災害の傷跡が残る人吉の町を訪ねる中で、ヒラクさん自身が見たことや感じたことを中心にインタビューを展開。
地理的・歴史的な観点から見た「人吉×発酵」のあり方を、発酵専門家としての視点とヒラクさんが持つやわらかい感性で語って頂いています。

今までにない角度から人吉球磨を見つめ直すことができる素晴らしいインタビューとなりました。ぜひサイトへお立ち寄りいただき、3人目のアンバサダー、小倉ヒラクさんのインタビューを御覧くださいませ。

URL:https://ambassadors.hakutake.co.jp/ambassador/ambassador-3.html

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◇小倉ヒラク(おぐらひらく)profile

発酵デザイナー。「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちと発酵・微生物をテーマにしたプロジェクトを展開。東京農業大学で研究生として発酵学を学んだ後、山梨の山の上に発酵ラボをつくり日々菌を育てながら微生物の世界を探求している。アニメ『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014を受賞。著書に『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』。YBSラジオ『発酵兄妹のCOZY TALK』パーソナリティ。2020年4月に下北沢に店舗『発酵デパートメント』オープン。

◇「人吉球磨アンバサダーズインタビュー」について
URL:https://ambassadors.hakutake.co.jp/
人吉球磨に所縁がある表現者たちのインタビューを掲載したwebコンテンツです。
各界で活躍する表現者の方々を、「アンバサダー(大使)」に任命し、インタビューを通じて人吉球磨がもつ価値や魅力を再発見していきます。

第195回 悪魔の温泉

 私は温泉評論家。全国津々浦々の名湯秘湯を訪れ、紹介している。温泉が大好きという人々がいかに多いことか。そんな人々が私の温泉紹介を心待ちにしていてくれる。潮が引くと出現する海底温泉や、一日一度だけ地中から噴き出す湯の溜まりを利用する間欠泉温泉やらも皆に喜んでもらった。私が紹介すると珍しがられて、ある岩窟温泉などすぐに世界遺産に指定されたほどだ。だから、今日も私の知られざる温泉探しの旅は続く。
 普段でも温泉人気は凄いのだが、特に冬場は温泉の人気が高まるようだ。雪が舞う風景の中で風呂に入る情景には誰もがロマンを駆り立てられるのではなかろうか。ネット情報では、もう誰もが知っている手垢のついた情報しか得られない。本当に貴重な情報は方々の土地を訪ね、口伝えに教えて貰わなければ得ることはできないのだ。
 この日、あるひなびた田舎町を訪ね、その温泉のことをそして、知った。情報をくれた男はあやふやに教えてくれた。背後のどんよりとした雲のかかった灰色の山を指差して。
「あの山の高いところに物凄く素晴らしい湯が湧いているそうだよ。どこのガイド本にも載っていない。発見されてまだ間がないらしい。いや、私もまだ行っていない。山に登るのは苦手なんだ。なんでも、誰かのお告げで見つかったらしい。噂だけれどもね。とにかく素晴らしいらしい。その湯に自分で浸らないと湯の素晴らしさはわからんのだろうな」
 もちろん、そんな温泉の存在は知らなかった。
 お告げで温泉が見つかるのは、定番だ。布袋さまが夢枕で教えてくれたり、聖徳太子が指差していたり、日蓮上人や薬師如来さんと偉い人の温泉のお告げ話は多い。だから不思議なことではない。
 教えられた山へタオル一本持って登ってみた。お告げで見つかった温泉にはどんな効能があるんだろう?いや、本当に温泉が存在するのか?雪が深くなっていく。
 温泉があっても誰が使う?熊?猿?鹿?
 山へと登る。ピークを過ぎて下ると岩場に出た。その岩場が奥に続く。あたりが急に冷え込んできた。高度のある山だから。平地より百メートル標高が上がるごとに〇・六度気温は下がるという。仕方ない。その岩陰の向こうは……。
 驚いた!点々と遭難者の凍死体が転がっているではないか。
 遺体の傍らにはタオルが……。皆、温泉を求めてここにたどり着いたのか。しかし力尽きて……?しかし、温泉は本当にあるのか?
 と、その岩陰の向こうにまわると天然の温泉が。体育館より広い巨大プールのような。迫り出した岩で温泉の半分くらいは雨が降っても大丈夫なようだ。そして、無数の人々が湯気の間から幸福な表情で浸かっているのが見えた。さっきの遺体は、もう少しで極楽温泉にたどり着けたというのに。可哀想に。
 さて、この温泉を体験しなくては。服を脱ぐと、早速、湯に浸る。
 なんと!この素晴らしい湯加減は!しかも湯質はとろっとろ。かすかに白濁して硫黄が香る。最高の温泉だ!身も心も癒やされる。
「もし、新顔の方かな」と声をかけられた。痩せた老人だ。この温泉の常連だろうか?
「はい。初めてです。いい湯ですね。私は温泉を取材に来ました。話を聞かせていただいていいですか?」
「ああ、かまわないよ。しかし取材したところで役には立たんと思うよ」
「いやいやいや。あなたは、この温泉の常連さん…?」
「なんと言えばいいか。発見者というか、生み出したものというか。昔はこのあたりに温泉がなくてのう…」
 なんと素晴らしい。温泉の発見者に会えるとは。
「へぇ、それで?」
「残念に思い、さまざまな神様仏様に温泉を作ってくれと祈ったが聞き入れてくれないんだ。そのとき、悪魔に願えば叶う…という噂を耳にしてな。悪魔を呼び出して頼んだんだ。悪魔は願いを叶える代わりに陥し穴を仕掛けると聞いていたんで、地獄の釜のような温泉を作らないように、最高の湯質湯加減の温泉にしてくれ。それで湧き出したのが、この“悪魔の湯”なのじゃ。まさに悪魔が作り出しただけあって、約束通り、湯に浸れば夢心地になれる至上の温泉というわけじゃ」
 なるほど。それで、これほどまでに素晴らしい温泉というわけだ。一度この湯に浸かれば二度とあがりたくなくなる魅力的温泉。まさに悪魔的!
「いい温泉でよかったですね。では、あなたはしょっちゅう、この温泉に来ておられるんですね?」
 老人は意外なことにため息をついた。なぜ?
「いや。私はこの悪魔の湯に入って以来、ここから出ていけなくなった。あまりの湯の気持ちよさに身も心も虜になってしまった。温泉を上がろうともしたのだが、無理だとわかった。だから悪魔の温泉で暮らし続けている。腹が減れば、温泉の中央に木の実もなっておる。それを喰えば、また極楽気分で、どうでもよくなる」
 ぞっとした。聞けば入浴中の他の人々も湯に浸かったままだと。まさに温泉に囚われた人々だ。「失礼します」とお湯から飛び出して全身をタオルで拭き、服を着る。と同時に、ものすごい寒さに凍え始めた。この悪魔の温泉から出ようとすると全身が凍えるということをその瞬間に理解した。さっきの凍え死んだ人々は温泉にたどり着けなかったのではなく、逃げようとして…。
 寒さに耐えられず服を脱ぎ再び温泉に飛び込む。全身に快感が戻る。至福だ。やはり…「悪魔の温泉じゃ」と老人が言った。

人吉球磨アンバサダーズインタビュー第2弾|俳優、中原丈雄さんのインタビューを公開!

このたび、人吉出身の俳優・中原丈雄さんより、絵画『黄昏の球磨川と人吉城址 心を流れる故郷の川』を寄贈いただきました。

本作は、人吉球磨復興支援をテーマに中原丈雄さんご自身が制作された絵画で、「豪雨災害で傷ついた人吉の皆さんを勇気づけたい」という中原さんの想いを形にした作品となります。

◆中原丈雄さんが絵画制作に取り組んだきっかけ
2020年7月の豪雨災害で、故郷である人吉・球磨が被災した中原丈雄さん。
新型コロナウイルスの影響でなかなか熊本に行くことが出来ない状況の中で、人吉・球磨のために支援活動をしたいという想いを持ちながらも、中原さん自身、自分にどんな復興支援が出来るのかと模索されていました。

そんな折、当社代表の高橋光宏が中原丈雄さんと人吉・球磨への支援について会話する中で、「いま中原さんが故郷に戻れず、何も支援できていないことを悩んでいらっしゃるのであれば、人吉の皆さんを勇気づけるために球磨川の絵を描かれたらどうか」という提案をしたところ、これを中原さんが快諾。
こうして、中原さんが復興支援を目的とした絵画の制作に取り組むことが決まりました。

◆作品内のモチーフについて
今回描いていただいた絵画の中では、「黄昏の空と球磨川、人吉城址、鉄橋と走る列車、水の手橋」などのモチーフが美しい色合いと素朴な筆遣いで描かれており、人吉に生きる人々の郷愁を呼び起こす作品となっています。

◆絵画の寄贈場所について
球磨焼酎ミュージアム「白岳伝承蔵」(熊本県人吉市合ノ原町461-7 TEL0966-32-9750)に寄贈され、同館白岳ギャラリーにてディスプレイを予定。
※現在は、新型コロナウイルス拡大防止のため休館中。

◆絵画の閲覧方法について(WEB)
・人吉球磨 「アンバサダーズインタビュー」のサイト内で閲覧可能です。
URL:https://ambassadors.hakutake.co.jp/
中原さん制作の絵画画像のほか、絵画制作に込めた想いや人吉球磨への愛を語った単独インタビューも掲載いたします。
ぜひ一度、「人吉球磨アンバサダーズインタビュー」を覗いてみてくださいね。

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◇中原丈雄(なかはらたけお)profile
1951年熊本県生まれ。劇団未来劇場にて数多くの舞台を踏んだ後、映画・テレビ等の映像世界に移る。1992年「おこげ」にて映画デビュー。以後、映画・ドラマに多数出演。現代劇、時代劇問わず幅広い活動を行っている。俳優活動以外にも絵画で個展を開いたり、講演やトークなどにも出演。またプライベートバンド「TAKEO.UT・MEN」を結成し、ライブも行っている。山崎製パン株式会社「ゴールドシリーズ」のCMに出演中。

◇「人吉球磨アンバサダーズインタビュー」について
URL:https://ambassadors.hakutake.co.jp/
人吉球磨に所縁がある表現者たちのインタビューを掲載したwebコンテンツです。
各界で活躍する表現者の方々を、「アンバサダー(大使)」に任命し、インタビューを通じて人吉球磨がもつ価値や魅力を再発見していきます。

人吉球磨 アンバサダーズインタビュー第1弾|人吉市出身、轟悠さんのインタビューを公開!

このたび、球磨焼酎支援プロジェクトサイトに続く復興支援を目的としたコンテンツ企画第二弾として「人吉球磨 アンバサダーズインタビュー」をリリースいたしました。

《サイトについて》
「人吉球磨アンバサダーズインタビュー」
URL:https://ambassadors.hakutake.co.jp/
人吉球磨に所縁がある表現者たちのインタビューを掲載したwebコンテンツです。
各界で活躍する表現者の方々を、「アンバサダー(大使)」に任命し、インタビューを通じて人吉球磨がもつ価値や魅力を再発見していきます。

《アンバサダーについて》
記念すべき第一回のインタビューには、人吉市出身で宝塚歌劇団専科・特別顧問の轟悠さんが登場。人吉で過ごした幼少期の思い出や、宝塚歌劇団という夢を目指したきっかけ、そして豪雨で被害を受けたふるさとへの想いを語っていただいています。

そして、第二回のインタビューは俳優の中原丈雄さんです。まだ俳優として売れていない時代は画家として生計を立てていたこともあり、故郷人吉の皆さんを元気づけるために「黄昏の球磨川と人吉城址 心を流れる故郷の川」というタイトルの絵を描かれました。絵に込めた球磨川と故郷への愛が溢れるインタビューです。

第三回以降も、発酵デザイナーの小倉ヒラクさんなど、人吉球磨に熱い想いをもった個性あふれるアンバサダーが登場する予定です。

《人吉球磨アンバサダーズインタビューに込めた想い》
「自分たちの暮らす地域の魅力を再発見し、人吉球磨から勇気や誇りを発信したい」
高橋酒造が人吉球磨アンバサダーズインタビューのリリースに込めた想いです。

豪雨災害が残した傷跡だけではなく、人吉球磨の魅力を出来るだけ率直に表現することを大事にしました。今回、インタビューではアンバサダーの個人的な想いを中心に、手触り感あふれる人吉球磨の魅力を語っていただいています。

ガイドブックには決して載せることができない人吉球磨に住む人々の温度感や土地が持つ懐の大きさを、インタビューを通じて感じ取って頂ければと思います。

第194回 秘境宮詣り

 元旦にはご利益のある神社に詣りに連れていくよ!と言っていた友人に連れられて山奥の渓谷の岩場にやってきた。登山口までは大学の研究室にいる彼の従弟が運転して。彼も友人の話に興味を持ったらしく、リュックに彼の計器類を詰め込んで。足を踏み入れづらい秘境にあるお宮だから参拝客は少ないそうだ。それだけに霊験あらたかかもしれないが。
 細い山道を一歩づつ丁寧に登りあげながら友人は話してくれた。
「そのお宮では、真剣に祈ると神さまが直々に話しかけてくれるそうだ。今、自分が迷っていることに答えを出してくれたり、年始なら一年のアドバイスをしてくれる。そのとおりに過ごせば強運まちがいなしということだ」
 友人は信じている。もともとスピリチュアル系の話が好きな奴だと思う。外国までパワースポットを求めて行ったりするからなあ。本当かどうかよりも、こっちは深山のフィトンチッドを味わえるだけでもいいと自分に言いきかせ、友人につきあったのだが。
「神社の裏に誰かが隠れてお告げを伝えるんじゃないか?」
「そんなことない。山奥で無人のお宮だし」
 足元に注意しながら谷底へ下りると、岩場の陰に小さな古い社があった。「着いた。ここだ」確かに他に人の気配はない。友人の従弟もあたりを見て確かにそうだと、とうなずく。
「さあ、参拝しよう」三人で小さな神殿の前にならび二礼二拍手一礼。そして、しっかりとお詣りした。今年こそいい年になりますように。どのくらい必死で祈ったろう。心の中で誰かが言った。
「よう、詣られた。願いはしかと聞き届けたぞ」どこで誰が言ってるんだ。神殿の上に光るものが見えた。その光が言う。「我を信じなさい」光はそのまま浮き上がり、次の瞬間、消えてしまった。友人や従弟にも見えたらしく、それぞれあたりを不思議そうに見回す。「神さまが約束してくれた。ありがたや」「ぼくにも聞こえたし、見えた。神か!」
 しかし従弟はリュックから計器を取り出し、何かを測定し始めていた。それから呟く。「やっぱりだ」それから「この神社で神の声が聞こえるようになったのはいつからですか?」「三年ほど前からかな?」「鹿はこのあたり多いんですか?」「山奥だからかな。鹿被害を避けるため、鹿よけネットを数年前から張ったくらいだから。でも、効果はどうかな?増えて希少植物まで食ってるらしい」そういえば、山の斜面はネットで覆われたエリアが方々にあった。「だから、ネットだけじゃなく鹿の嫌がる音を発生させる装置を、あちこちに三年前からつけていると聞いた」
「謎がとけた。それだ!」と従弟が言った。わけがわからない。「鹿の嫌う音は人に聞こえない高複雑性超高周波です。そして兄さんが使っているのは、山奥で使える特殊な衛星携帯電話ですよね。より強力な電磁波を発するその周波数が重なり、脳のシルヴィウス溝を刺激する。すると天使が見えたり神の声が聞こえたりという錯覚が起こるんです。これはカナダのローレンシアン大学のパーシンガー博士が発見している。鹿除け高周波ハイパーソニック効果と電磁波携帯電話の相乗効果で起こる現象にすぎないのです。これで、幽霊が現れたり見たり、宇宙人に拉致され意識を失ったという現象は説明がつくんです」
 そうだったのか。科学で全て説明がつくとは。友人も憑き物が落ちたような表情になっていた。そう説明がつけば納得してしまう。
 そのとき人声がする。見ると団体さんが、やっとのことでお宮にたどり着いたところだ。「ここが神がお告げをなされるお社!」「ありがたやありがたや」「南無南無。本当だ。神さまが来年は幸福にしてやると仰った」
 人々は狂喜して叫ぶ。なかには感動で泣き出すものも。「苦労してここ迄来てよかった」「神さま、ありがとうございます」
 本当のことを教えてやろうかと思ったが、それは苦労してここ迄たどり着いた彼らにあまりにも酷なことのように思えて黙っていた。人々は、何度も社に頭を下げ喜び立ち去っていった。そんな彼らを羨ましく思った。まさに信じるものこそ救われん、鰯の頭も信心からだなあ、と。
 見送った友人と従弟は我に返ったようだ。
「インチキ神さまだとわかったら、このままにしておくべきじゃない気がしてきたよ」「神殿を壊しておけば、人々はご利益がないとわかるだろう」と、とんでもないことを言い出した。友人が賽銭箱を蹴り、従弟がバールで社を壊そうとしたときだった。社の中から、真っ黒などろどろしたタールのような物体が噴き出した。真っ黒いものは腕を伸ばし悲鳴をあげる二人を捕まえると、否応なく地下へと引きずり込んだ。これは……神さまだ。この社で奉られている…。なんと怖ろしい。
 腰が抜けて身動きできずにいると、真っ黒な形のわからないものが近づいてきて、唸り声をあげた。もうだめだ。口からでまかせを言った。
「先ほどは、今年はいい年になりますようにと願いを聞き届けていただきありがとうございます。この神さまは神々しくありがたい神さまだと、せいぜい宣伝につとめます。ですからお見逃しください」
 すると真っ黒い物は、納得したようでゆっくりと地下に戻っていった。後は静寂だけ。
 あれは神さまなのだろうか?私にはなにか正体のわからない邪悪なものにしか見えなかった。
 そして、その年はいい年になったかというと、いいこともあり悪いこともある、程々の年だった。
 年始詣りってそんなもんじゃないか、と最近は思っている。
 あ、そうだ!賽銭あげるの忘れてた。それか!

高橋酒造 「英語版」コーポレートサイトリリース

2020年12月22日(火)に、海外向けの「英語版」コーポレートサイトをリリースいたしました。
ページ内のJPN/ENG切り替えボタンで変更ができます。

今後もより多くのお客様に情報発信できるサイトを目指して改善して参ります。
この機会に是非ご利用くださいませ。

■高橋酒造 英語版コーポレートサイト
https://www.hakutake.co.jp/eng/

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English-language (EN) Website Launch on Our Website

December 22, 2020- We have launched the English-language (EN) version of our website. You can switch between JP/EN languages by using the language selector at the top right of the screen.

We will continue to improve our company website and share information with more customers. Please look at our new, exciting English-language website.

■Takahashi Shuzo (EN) website
https://www.hakutake.co.jp/eng/

第193回 無神教のお誘い

 師走の声を聞くと風も冷たく思える。そうか、師走かあ、と溜息が出る。大変な年だったなあ、と振り返って毎年思うのだが、今年は特に大変な年だったような気がする。師走は師も走るほど忙しいという意味だが、この“師”というのは学校の先生のことではなく坊さんのことだという。人の道を悟す坊さんでさえ走り回るのか。
 駅前へ来て思う。このような駅前広場では日頃から宗教に関わる人が出没するのだが、なるほど師走はいつもより出現率が高い気がする。大声で叫んでいる男が持つ旗には。
ーー目覚めなさい。神の最後の審判の日は近づいている。
 先を急ごうとすると女性が小冊子を手渡してきた。
ーー神はあなたの行いを常に見ている。
 目玉の絵と仔羊たちの絵。アンバランスだが、その目玉は神の目なのだろうか。
「おまちなさい」と呼び止められた。「なにごとですか」と訊ねると「あなたの心の中に住む邪悪なものが見えます。追いやってあげましょう。わたしの手の先に神が宿っていますから手かざしで浄化します」と
 実は、私は神という存在を信じていない。彼らはこの世界を、宇宙を、神が創造したのだという。神ではなく物理現象で宇宙は生れた。地球が誕生して生物が発生する。生物が進化を繰り返して人間になった。そして現在に至る、と思っている。
 そうではないか!神がどこに介在できるというのだ。
 すべての宗教で死後の世界には天国と地獄が待っている。行く先は生前の行いや信仰によって決まる、ということになっている。だから神が示したルールで生前を過ごすのが大事なのだと。
 神などいない。馬鹿げている。死後の世界など存在するわけがない。死後の世界を恐れる人間が作り出したのが、宗教の正体だと思う。だから、私は、神の存在を信じない。このような者を無神論者と呼ぶのだ。そんな人間は宗教には縁がない。
 それにしても、年末はよくもこんなに各宗派が信者を増やそうと、駅前に出現するものだ。少なくとも私には無駄だ。呼びかけても。
 すると「神はいない」と記されたポスターが貼ってある。これは意外だ。私と同じ考えだ。中年男が叫ぶ。「無神教へお入りください」ポスターには「天国も地獄もない」とある。そして「死後の世界もない」
 これが宗教として成立するのか?驚き呆れて足を止めた。ポスターの前の男が近づいて来て言った。
「顔を見ればわかります。あなたは無神論者ですね。どうです。無神教に入りませんか」
「そんな宗教に入らなくてもやっていける。無神教に入るとどんなメリットがあるというのです?」
 男はにっと笑った。「私は科学者です。快楽死酵素を発見したことを皆に知ってもらいたくて無神教を立ち上げました」
 快楽死酵素…初耳だ。男は話し始めた。
「死後の世界はありませんが、人は死ぬ瞬間に苦しさや痛みを味わいます。ところが、その苦痛をなくす酵素が存在することを私は私は発見しました。その酵素の中でも特別な酵素が存在します。苦痛がなくなるだけでなく、死ぬ瞬間に、生涯味わったことのないような至上の快感を全身にもたらしてくれる。そんな酵素です。これを快楽死酵素と名付けました。現存するどんな麻薬より素晴らしい快感です。入信した途端、この酵素は体内で自己生成されることがわかりました。どうです。そんな体質になりたくありませんか?」
 なるほど。私は神は信じないけれど、これまで味わったことのない快楽が人生の最後に味わえるのであれば信者になってみようかという気になった。しかし、待てよ。
「入信して教団員になっただけで快楽死酵素が得られるならば、いったん入団してすぐに教団をやめればいいとも思えますが」
「無神教に入ればすぐに快楽死酵素がフルに備わるのは確かですが、この酵素はすぐに分解してしまいます。ただ無神教の教義を実行していれば、分解は止められるのです。教義はむずかしくありません。八つの戒めを守るだけです」
 へぇ。簡単な八つの戒めとはなんだろう?
「本当に簡単なことですか?片足立ちで一日過ごせ、とか、お犬さまより早く食事をしてはいけない、とかむずかしいことなんじゃありませんか?」
「そんなことはありません。実はあなたがよくご存知の方も無神教の信者だったとわかっています。たとえばキリスト。彼はキリスト教を起こしてから世の中の真実に気づき、無意識のうちに無神教の法則を実行していたのです。だから十字架で磔にされたときも激痛の表情に見える絵画ばかりが残っているが快楽の極みの表情だったのです」
「ホントですか?」
「実は仏陀も無神教信者でした。仏教を開いた後だったのでいまさら無神教と言えなかった。ご存知かと。傲慢、強欲、嫉妬、色欲、憤怒、暴食、怠慢などを犯さねば快楽死酵素は減少しない。世の中も平和になる」
 なんだ、それは知っているぞ「簡単ですね。七つの大罪を犯すなということですね。それならやれる。私も、その無神教に入信します。ん?待てよ。今ので七つですね。確か、さっきは八つと。最後の戒めは何でしょうか?」
 男はにっと笑った「はい。八番目。汝、教団にお布施を欠かすことなかれ」