第197回 哀しきアムネジア

 最近は、どうも物忘れがひどくなった。人と話をしていて固有名詞が出てこない。俳優や歌手、政治家、ひいては歴史上の人物まで。口許まで出かかっているのだが、言おうとするとどうしても口に出せない。だから、仕方なく「あ・れ・だよ。あれ。あれ」と言ってしまう。場所なら「あそこだよ。だいぶ前に行ったとこ」俳優なら「あの人だよ。よく悪役もやる。あ・の・人」といった感じ。気心の知れた人だと、うまく会話の流れをつかんで「あ、カレーのうまいの食べたところだね。わかる、わかる」という具合に察してくれる。正解は出てこなくても、その場は何とかやり過ごせる。喉元に引っかかったままなのだが、ある瞬間にふっと声が聞こえることがある。そうだったんだ。なんで、こんな簡単なこと思い出せなかったんだろう、と自分が嫌になってしまう。
 固有名詞が思い出せないだけではない。日常生活でも、影響は確実に現れている。
 最近、本を読んでいて活字が読みづらくなった。字のまわりが滲んだように見えるのだ。「老眼鏡を使ってみたらいいと思う」と薦められ、かけるようになった。
 そのとおりだった。劇的に視界が明るくなった。仕事は事務でパソコンを使わず手書きでやっている。だから、仕事にも老眼鏡は効果を上げている。使い始めてよかった。薦めてくれたことに感謝している。
 だが、私はいつでも老眼鏡をかけるわけではない。映画を観に行くときや、テレビを見るときはメガネを使わなくて済む。
 そこで大変なことが起こる。テレビでニュースを見てから書斎へ戻る。そして本を取り出したときに問題は起こる。
 机の上に眼鏡がない。煙のように消えている、あれ、さっき本を読んでいたときは、たしかにここで使っていた。
 それが今はなくなっている。あわてて机のまわりを見る。
 ない。
 机の下も見る。ない。机の横の隙間も覗き込む。ない。ひょっとしたらテレビを観るときに無意識にはずしたとか。
 テレビの部屋に行き隅から隅までチェックするが、ない。消えてしまったのだろうか、とも思う。まるで魔法のように。「そんなときは、顔でも洗ったらいい。ふふ」
 そして、ふと洗面所の鏡の前に着いたときに、眼鏡のありかを知らされることになる。
 老眼鏡は、頭の髪の上にかけられたままになっていたのだ。いくら部屋の中を探しても、出てこないわけだ。
 へなへなと崩れ落ちてしまう。
 きっと、老眼鏡をテレビを観るとき頭にかけたのは、無意識だったのだろう。自分が悲しくなる。似たようなことは携帯電話でも起こる。帰り着いて携帯電話を取り出そうとしてないことに気づく。さんざん部屋中を探すが見つからない。もちろん、バッグの中も探す。出てこない。ひょっとしたら、出先に置き忘れてきたのだろうか?行った先やタクシー会社に電話するが見当たらないという返事が。途方に暮れる。「固定電話から携帯電話にかけてみたらいいよ」といわれる。
 そうだ。その手があったか。あわてて電話してみる。すると…電話の呼出音が鳴り響く。
 なんと電話は私が帰ってきて置いた帽子の下にあった。携帯電話を置いてその上に帽子を無意識にかぶせてしまったらしい。
 冗談にならないくらい物忘れはひどくなっている。健忘症という言い方がある。健やかな物忘れ病となるが、私のじゃない、私のは妄忘病くらいが正しいかな。昨年もそうだ。昼食を終え、仕事場に戻り午後の仕事を始めた。書き損じが出たのであわてて消しゴムで消す。大量の消しカスが出たので、机の上をきれいにするために消しカスを吹く。
 不思議だ。消しカスはそのままだ。首をひねる。「はめたままじゃないか」と言われる。
 なるほど。外出から帰ってからマスクを外さないままでいたのだ。消しゴムのカスが吹き飛ばせない理由がわかった。
 どれも、自分の物忘れが原因だ。
 しかし、いつもかろうじてのところで、大事なことをアドバイスしてくれることに感謝している。やはり持つべきは家族だな。
 その家族が今日は揃ってやってきた。ときには、単独ではなく家族全員で行動することも必要だろう。妻と娘は手分けをして掃除にいそしんでいる。二人が協力しあって作業しているのを見るのは気持ちがいい。母は、その様子をにこにこ笑いながら眺めている。頼まれていたものがやっと揃ったらしく、息子が遅れて到着した。「お待たせぇ。途中、道が混んでいてさぁ」
「さぁ、掃除も終わったし、全員揃ったから」と私はみんなに言った。ライターを探す。あれ?ライターを持ってきた筈なのに。ポケットに入っていない。どうしよう。「ライターなかったから、マッチを持ってきたんじゃないか」といつものように教えられる。その通りだ。小物を入れるバッグの中にマッチを入れてきたのだった。すんでのところでいつも父のアドバイスに教えられる。「始めようか。花を飾って、線香とロウソクに火をつけて」
 そこで、あれ?と思う。なぜ、父が教えてくれるんだ。不思議だ。
 今日は、父の一周忌で家族揃っての墓参りだったのではないか。
 どうも、最近は物忘れがひどくなったなぁ。自分のことながら、呆れるしかない。

「白岳うめぽん」「白岳あの頃の梅酒」 価格改定(値上げ)のおしらせ

いつも高橋酒造の商品をご愛顧いただきましてありがとうございます。
当社は、2021年4月1日より出荷分の「白岳うめぽん」「白岳あの頃の梅酒」の価格を改定させていただきます。

今後も企業努力を行ないながら、安全な商品を継続してお届けし、お客様にご満足いただける商品の提供に努めてまいります。

何卒ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。

【対象商品】

「白岳うめぽん」720ml、300ml

https://www.hakutake.co.jp/lineup/detail/umepon.php

 

「白岳あの頃の梅酒」720ml、300ml

https://www.hakutake.co.jp/lineup/detail/umesyu.php

 

【改定時期】
2021年4月1日(木)

【改定後価格について】
① 「白岳うめぽん」 720ml   1,375円(税込)
② 「白岳うめぽん」 300ml   682円(税込)
③ 「白岳あの頃の梅酒」720ml   1,375円(税込)
④ 「白岳あの頃の梅酒」300ml   682円(税込)
※セット商品については、現価格に値上げ価格を上乗せする形となります。

【本件についてのお問合せ先】
高橋酒造株式会社 お客様相談室 TEL:0966-24-7726
※お問い合わせには、弊社受付時間の平日午前9時から午後5時までの間(土日祝日、盆、年末年始など休日を除く)に順次対応させていただきます。
※お客様からいただきましたお電話は、内容を正確に承るため通話を録音させていただいております。

東急プラザ主催「ニッポンのいいお酒。」での商品販売のおしらせ

お客様各位

いつも高橋酒造の商品をご愛顧いただきましてありがとうございます。

このたび、東急プラザ主催「ニッポンのいいお酒。」第5回 国産本格焼酎と焼酎ハイボールにて、“ゆずもん”、“KOMORIUTA”、“白岳全麹”、“百”の販売が決定いたしました。

「ニッポンのいいお酒。」は東急プラザが昨年から実施しているイベントで、第5回目となる今回は、球磨焼酎をはじめとする全国の国産本格焼酎が登場いたします。

◆「ニッポンのいいお酒。」第5回 国産本格焼酎と焼酎ハイボールについて

https://shibuya.tokyu-plaza.com/news/news.html?_id=1632

開催期間:3月26日(金)~4月11日(日)(17日間)

販売商品:白岳ゆずもん720ml、KOMORIUTA 30度720ml、白岳全麹 25度 900ml、百 23度 500ml

開催場所:東急プラザ渋谷6階 GRAND SESSION

〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂 1-2-3(渋谷フクラス内)

https://shibuya.tokyu-plaza.com/access/

イベントについて:原産地の水で割った焼酎水割り、他 有料試飲&販売会

・ロック3 種飲み比べ… ¥ 1 , 5 0 0 、¥ 2 , 0 0 0

・水割り又はハイボールの試飲放題… ¥ 2 , 0 0 0 、¥ 3 , 0 0 0 、¥ 3 , 5 0 0

高橋酒造の商品の中でも、普段なかなか購入することができない「限定商品」を出品しております。ぜひ、お立ち寄りくださいませ!

みなさまのご来店心よりお待ちしております。

「球磨焼酎ミュージアム 白岳伝承蔵」営業再開のお知らせ

新型コロナウイルスによる感染防止のため、「球磨焼酎ミュージアム 白岳伝承蔵」の館内見学ならびに館内販売を休止しておりましたが、このたび営業を再開させていただきます。
なお、団体(10名以上)のお客様は、引き続き来館受付を休止させていただきます(再開時期未定)。ご了承ください。

【営業再開日】
令和3年3月25日(木)

【営業時間】
9:00~16:00 (15:30受付締切)
※休日は年末年始のみ

【お客様および店内・従業員の感染対策について】

以下の感染対策を行い、感染予防に努めます。
① 施設入り口にて、モニターによる検温とアルコール消毒を実施
② 手指消毒・館内消毒(拭き消毒)
③ 白岳ホールでの椅子の間隔をあけ密を避ける
④ レジカウンターシールド
⑤ 金銭受け渡しはトレーにて
⑥ 定期的な換気
⑦ マスク着用(スタッフ・来館者)
⑧ 混雑時には、一時的に入場制限を行う場合がございます。

<お客さまへのお願い>
① ご来館の際は必ずマスク着用・手指消毒のご協力をお願いいたします。
② 以下に該当する方がいらっしゃいましたら、ご来館をお控えいただくようお願いいたします。
・ 風邪の症状や37.5℃以上の発熱がある方(解熱剤を飲んでいらっしゃる方を含みます)
・ 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある方

感染状況が悪化し、再び緊急事態宣言が発令された場合など、
状況を見て再び営業を休止する場合がございます。
その際は、改めてお知らせいたします。

ご理解、ご協力をよろしくお願い申し上げます。
スタッフ一同、みなさまのご来館を心よりお待ちしております。

「球磨焼酎ミュージアム 白岳伝承蔵」
http://www.denshogura.jp/
0966-32-9750

100名限定!花香る、酒香る、白岳KAORUキャンペーンのお知らせ

3月に入って、すっかり暖かくなりましたね。
心なしか人吉の桜の木も、早く芽を出したいとそわそわしはじめたようです。

今回、HAKUTAKE ONLINE SHOPでは、春の訪れが感じられるこの季節にぴったりのキャンペーンを開催いたします。

ぜひ、この機会にHAKUTAKE ONLINE SHOPでお買い物して、白岳KAORUをゲットしてくださいね。
数量限定ですので、ご購入はお早めに!

キャンペーンの詳細はこちらから
https://hakutake-shop.jp/view/news/20210312101358

 

ゆめタウン主催「九州・沖縄フェア」での商品販売のおしらせ

お客様各位

いつも高橋酒造の商品をご愛顧いただきましてありがとうございます。

このたび、ゆめタウン(株式会社イズミ)主催の「九州・沖縄フェア」にて、当社製品“金しろ”、“銀しろ”の販売が決定いたしました。

《ゆめタウン主催「九州・沖縄フェア」について》
開催期間:3月18日(木)~21日(日)(4日間)
販売商品:金しろ(謹醸しろ)720ml・銀しろ(吟麗しろ)720ml

開催店舗について
◆九州エリア
・はません、サンピアン、光の森、八代、大牟田、久留米、佐賀、夢彩都、武雄、大川、八女、あらお、筑紫野、博多、行橋、南行橋、中津、別府、遠賀
◆本州エリア
・長府、ゆめシティ、柳井、徳山、下松、新南陽、宇部、山口、防府、南岩国、大竹、五日市、LECT、廿日市、広島、みゆき、呉、東広島、吉田、黒瀬、安古市、学園、江田島、出雲、斐川、浜田、ゆめマート浜田、益田、江津、高松、三豊、丸亀、徳島、福山、蔵王、倉敷、平島、姫路、井原、邑久、山陽、久世

※金しろ・銀しろは一部店舗で取り扱いが無い場合がございます、何卒ご了承下さい

当日は高橋酒造の商品に加えて、九州各地の名産品も多数取り扱っておりますので
ぜひ、お立ち寄りくださいませ!

みなさまのご来店心よりお待ちしております。

第196回 世の中リモコン

 歩いていると、不思議な老人がいる。存在感がないというか、透明っぽいというか。「おかしいなぁ?ここいらと思うんだが?」と呟いている。通り過ぎて振り返ると老人はしきりに道で何かを探しているようだ。
 落としもの?と首をひねったとき街路の脇の溝に黒っぽい装置のようなものが落ちているのを見つけた。ひょっとしたら、さっきの老人は、これを探していたのではないだろうか?
 あわてて拾いあげて老人に教えてやろうと見ると、老人の姿は薄くなり、消えてしまった。いったい何者だったのか?
 黒っぽい装置は長さ20センチほどの板状の物体だった。左上に赤い丸が一つある。その下にいくつものボタンがならんでいた。そのボタン一つずつに意味があるのかもしれない。表示がないからわからないが。
 老人が見えたあたりまで戻ってみたが、もう姿がない。目の錯覚でなければ、薄くなって本当に“消えた”のかもしれない。
 いったい何者だったのだろう。
 そのまま会社に戻った。今日は終業まで営業会議だった。思ったような成績をあげられていないから気が重い。正直、会議も出たくない。成績アップがテーマの会議なのだ。
 会議が始まり、課長がそれぞれに意見を述べさせる。いらいらしながら順番を待つ。早く終わればいいのに、と、手に持っていた黒い装置を握りしめた。
 どうしたことか、課長が甲高い声でチャカチャカ話し始めた。慌てて手を離すと、話が正常になった。
 この装置のせいだ。
 会議は続く。次があてられ意見を述べたが、つまらない、と課長に罵倒された。
 次にこちらを指差した。なにもアイデアはない。脂汗がにじみ装置を握ると、会議の出席者がいっせいにフリーズした。
 この装置のせいなのか?
 課長はこちらを指差したまま静止。他の課員もつまらなさそうに止まったままだ。
 わかった。この細長い黒い装置は世の中のリモコン装置なのだ。そして今押したのは“一時停止”。さっき、課長がものすごい勢いで話しだしたのは“早送り”か。いや“1.3倍速再生”なのだろう。立ち上がって課長の前に置かれた用紙を見ると「試みる手法案」が箇条書きにしていくつもあげられてる。あわててそれを写して席に戻り装置を動かす。
 世の中がまた動き出した。
 立ち上がって、今メモしたものを読み上げて「以上のようなものを打開策として申し上げます、これらを一つづつ実施していくことが有効かと思います」
 席に座ると、課長はぽかんと口を開けてこちらを見ている。先に結論を言ってしまったので、早々に会議は終わってしまった。
 終業時間まで早送りして帰りたかったのだが、どれが早送りボタンなのかがかわからない。
 定刻で終業して家に帰る。
 帰り道にぼんやりと考える。あのリモコンを落とした老人は、いったい何者なのだろう?
 ひょっとしたら神さまなのかもしれないなぁ。そして、この世の中を操作しているのかも。
 家に帰ると妻に文句を言われた。頼まれていた買い物を忘れてしまったからだ。妻の小言に耐えていると、持ち帰ったリモコン装置が目に入った。そして、その斜め前には我が家のブルーレイディスク用のリモコン装置がある。その2つを見比べて気がついた。
 なんと、テレビやブルーレイのリモコンと私が拾って持ち帰ってきたリモコンのボタンの配列はまったく同じなのだ。ということは…。
 ブルーレイリモコンの早送りの位置にあるボタンを試しに押して見る。すると妻の小言がすごい勢いで進み、あっという間に終わってしまった。これだ、これだ。
 ブルーレイのリモコンの方には操作方法がすべて表示されていた。同じ位置のボタンを押せば、世の中も同じように操作できるのだ。しかし、今の生活は同じことの繰り返し。いい加減飽き飽きしてきたぞ。このリモコンで、もっと刺激のある生活はできないものだろうか?
 ぼんやりとそう思うようになった。ブルーレイリモコンに細長い“チャンネル”というボタンがあった。では、こちらの方の同じ位置にあるボタンを。
 エイッ。
 うわっ。目の前の世界が消え去る。ここは密林の中か。遠くから獣の吠える声がする。そして地響き。近づいてくる。巨木の間から出現したのは恐竜だった。あわててボタンを押すと、部屋の中だ。半裸の美女がソファーの私に飲み物を差し出す。これだよ。この世界だ。いつまでもこの世界が続いてくれればいい。「もうお別れなの。残念だわ」と美女が言う。いやだ、行かないでくれ。この世界がいい。と“停止”位置のボタンを押すと世界が凍結してしまった。世界は変化しないが、何も動かない。どうすれば元に戻る?いろんなボタンを押してみたが、凍結した世界が元に戻ることはなかった。あとは、リモコンの左上にある赤いボタンしかない。
 仕方ない。その赤いボタンを押してみると、世の中のすべてが真っ白く……消え

人吉球磨アンバサダーズインタビュー第3弾|発酵デザイナー、小倉ヒラクさんのインタビューを公開!

“ソーダ割りやショートカクテルとかも合うでしょうね”

銀しろが入った盃を傾けながらそう語るのは、発酵デザイナーの小倉ヒラクさん。
「人吉球磨アンバサダーズインタビュー」、3人目のアンバサダーです。

ヒラクさんの肩書きは、まだ日本では耳慣れない「発酵デザイナー」。
ヒラクさん曰く、発酵デザイナーの仕事とは、「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」こと。全国の醸造家や研究者たちと発酵・微生物をテーマにしたプロジェクトを展開しながら、発酵の持つユニークな一面や奥深さを、デザインという媒介を通じて表現するクリエイター兼ディレクターです。

もともと、アートディレクターとして国内外で活躍していたヒラクさんでしたが、ある機会に発酵食品ができる仕組みに強い興味を持ち、独学で勉強を開始。
2019年に渋谷ヒカリエで開催され、5万人の来館者を集めた展覧会「発酵ツーリズム」や2020年4月に東京・下北沢にオープンした発酵食品のセレクトショップ「発酵デパートメント」など、発酵の世界を彩る独自のコンセプトをデザインしつづけています。

サイトでは、2020年9月に豪雨災害の傷跡が残る人吉の町を訪ねる中で、ヒラクさん自身が見たことや感じたことを中心にインタビューを展開。
地理的・歴史的な観点から見た「人吉×発酵」のあり方を、発酵専門家としての視点とヒラクさんが持つやわらかい感性で語って頂いています。

今までにない角度から人吉球磨を見つめ直すことができる素晴らしいインタビューとなりました。ぜひサイトへお立ち寄りいただき、3人目のアンバサダー、小倉ヒラクさんのインタビューを御覧くださいませ。

URL:https://ambassadors.hakutake.co.jp/ambassador/ambassador-3.html

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◇小倉ヒラク(おぐらひらく)profile

発酵デザイナー。「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちと発酵・微生物をテーマにしたプロジェクトを展開。東京農業大学で研究生として発酵学を学んだ後、山梨の山の上に発酵ラボをつくり日々菌を育てながら微生物の世界を探求している。アニメ『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014を受賞。著書に『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』。YBSラジオ『発酵兄妹のCOZY TALK』パーソナリティ。2020年4月に下北沢に店舗『発酵デパートメント』オープン。

◇「人吉球磨アンバサダーズインタビュー」について
URL:https://ambassadors.hakutake.co.jp/
人吉球磨に所縁がある表現者たちのインタビューを掲載したwebコンテンツです。
各界で活躍する表現者の方々を、「アンバサダー(大使)」に任命し、インタビューを通じて人吉球磨がもつ価値や魅力を再発見していきます。

第195回 悪魔の温泉

 私は温泉評論家。全国津々浦々の名湯秘湯を訪れ、紹介している。温泉が大好きという人々がいかに多いことか。そんな人々が私の温泉紹介を心待ちにしていてくれる。潮が引くと出現する海底温泉や、一日一度だけ地中から噴き出す湯の溜まりを利用する間欠泉温泉やらも皆に喜んでもらった。私が紹介すると珍しがられて、ある岩窟温泉などすぐに世界遺産に指定されたほどだ。だから、今日も私の知られざる温泉探しの旅は続く。
 普段でも温泉人気は凄いのだが、特に冬場は温泉の人気が高まるようだ。雪が舞う風景の中で風呂に入る情景には誰もがロマンを駆り立てられるのではなかろうか。ネット情報では、もう誰もが知っている手垢のついた情報しか得られない。本当に貴重な情報は方々の土地を訪ね、口伝えに教えて貰わなければ得ることはできないのだ。
 この日、あるひなびた田舎町を訪ね、その温泉のことをそして、知った。情報をくれた男はあやふやに教えてくれた。背後のどんよりとした雲のかかった灰色の山を指差して。
「あの山の高いところに物凄く素晴らしい湯が湧いているそうだよ。どこのガイド本にも載っていない。発見されてまだ間がないらしい。いや、私もまだ行っていない。山に登るのは苦手なんだ。なんでも、誰かのお告げで見つかったらしい。噂だけれどもね。とにかく素晴らしいらしい。その湯に自分で浸らないと湯の素晴らしさはわからんのだろうな」
 もちろん、そんな温泉の存在は知らなかった。
 お告げで温泉が見つかるのは、定番だ。布袋さまが夢枕で教えてくれたり、聖徳太子が指差していたり、日蓮上人や薬師如来さんと偉い人の温泉のお告げ話は多い。だから不思議なことではない。
 教えられた山へタオル一本持って登ってみた。お告げで見つかった温泉にはどんな効能があるんだろう?いや、本当に温泉が存在するのか?雪が深くなっていく。
 温泉があっても誰が使う?熊?猿?鹿?
 山へと登る。ピークを過ぎて下ると岩場に出た。その岩場が奥に続く。あたりが急に冷え込んできた。高度のある山だから。平地より百メートル標高が上がるごとに〇・六度気温は下がるという。仕方ない。その岩陰の向こうは……。
 驚いた!点々と遭難者の凍死体が転がっているではないか。
 遺体の傍らにはタオルが……。皆、温泉を求めてここにたどり着いたのか。しかし力尽きて……?しかし、温泉は本当にあるのか?
 と、その岩陰の向こうにまわると天然の温泉が。体育館より広い巨大プールのような。迫り出した岩で温泉の半分くらいは雨が降っても大丈夫なようだ。そして、無数の人々が湯気の間から幸福な表情で浸かっているのが見えた。さっきの遺体は、もう少しで極楽温泉にたどり着けたというのに。可哀想に。
 さて、この温泉を体験しなくては。服を脱ぐと、早速、湯に浸る。
 なんと!この素晴らしい湯加減は!しかも湯質はとろっとろ。かすかに白濁して硫黄が香る。最高の温泉だ!身も心も癒やされる。
「もし、新顔の方かな」と声をかけられた。痩せた老人だ。この温泉の常連だろうか?
「はい。初めてです。いい湯ですね。私は温泉を取材に来ました。話を聞かせていただいていいですか?」
「ああ、かまわないよ。しかし取材したところで役には立たんと思うよ」
「いやいやいや。あなたは、この温泉の常連さん…?」
「なんと言えばいいか。発見者というか、生み出したものというか。昔はこのあたりに温泉がなくてのう…」
 なんと素晴らしい。温泉の発見者に会えるとは。
「へぇ、それで?」
「残念に思い、さまざまな神様仏様に温泉を作ってくれと祈ったが聞き入れてくれないんだ。そのとき、悪魔に願えば叶う…という噂を耳にしてな。悪魔を呼び出して頼んだんだ。悪魔は願いを叶える代わりに陥し穴を仕掛けると聞いていたんで、地獄の釜のような温泉を作らないように、最高の湯質湯加減の温泉にしてくれ。それで湧き出したのが、この“悪魔の湯”なのじゃ。まさに悪魔が作り出しただけあって、約束通り、湯に浸れば夢心地になれる至上の温泉というわけじゃ」
 なるほど。それで、これほどまでに素晴らしい温泉というわけだ。一度この湯に浸かれば二度とあがりたくなくなる魅力的温泉。まさに悪魔的!
「いい温泉でよかったですね。では、あなたはしょっちゅう、この温泉に来ておられるんですね?」
 老人は意外なことにため息をついた。なぜ?
「いや。私はこの悪魔の湯に入って以来、ここから出ていけなくなった。あまりの湯の気持ちよさに身も心も虜になってしまった。温泉を上がろうともしたのだが、無理だとわかった。だから悪魔の温泉で暮らし続けている。腹が減れば、温泉の中央に木の実もなっておる。それを喰えば、また極楽気分で、どうでもよくなる」
 ぞっとした。聞けば入浴中の他の人々も湯に浸かったままだと。まさに温泉に囚われた人々だ。「失礼します」とお湯から飛び出して全身をタオルで拭き、服を着る。と同時に、ものすごい寒さに凍え始めた。この悪魔の温泉から出ようとすると全身が凍えるということをその瞬間に理解した。さっきの凍え死んだ人々は温泉にたどり着けなかったのではなく、逃げようとして…。
 寒さに耐えられず服を脱ぎ再び温泉に飛び込む。全身に快感が戻る。至福だ。やはり…「悪魔の温泉じゃ」と老人が言った。

人吉球磨アンバサダーズインタビュー第2弾|俳優、中原丈雄さんのインタビューを公開!

このたび、人吉出身の俳優・中原丈雄さんより、絵画『黄昏の球磨川と人吉城址 心を流れる故郷の川』を寄贈いただきました。

本作は、人吉球磨復興支援をテーマに中原丈雄さんご自身が制作された絵画で、「豪雨災害で傷ついた人吉の皆さんを勇気づけたい」という中原さんの想いを形にした作品となります。

◆中原丈雄さんが絵画制作に取り組んだきっかけ
2020年7月の豪雨災害で、故郷である人吉・球磨が被災した中原丈雄さん。
新型コロナウイルスの影響でなかなか熊本に行くことが出来ない状況の中で、人吉・球磨のために支援活動をしたいという想いを持ちながらも、中原さん自身、自分にどんな復興支援が出来るのかと模索されていました。

そんな折、当社代表の高橋光宏が中原丈雄さんと人吉・球磨への支援について会話する中で、「いま中原さんが故郷に戻れず、何も支援できていないことを悩んでいらっしゃるのであれば、人吉の皆さんを勇気づけるために球磨川の絵を描かれたらどうか」という提案をしたところ、これを中原さんが快諾。
こうして、中原さんが復興支援を目的とした絵画の制作に取り組むことが決まりました。

◆作品内のモチーフについて
今回描いていただいた絵画の中では、「黄昏の空と球磨川、人吉城址、鉄橋と走る列車、水の手橋」などのモチーフが美しい色合いと素朴な筆遣いで描かれており、人吉に生きる人々の郷愁を呼び起こす作品となっています。

◆絵画の寄贈場所について
球磨焼酎ミュージアム「白岳伝承蔵」(熊本県人吉市合ノ原町461-7 TEL0966-32-9750)に寄贈され、同館白岳ギャラリーにてディスプレイを予定。
※現在は、新型コロナウイルス拡大防止のため休館中。

◆絵画の閲覧方法について(WEB)
・人吉球磨 「アンバサダーズインタビュー」のサイト内で閲覧可能です。
URL:https://ambassadors.hakutake.co.jp/
中原さん制作の絵画画像のほか、絵画制作に込めた想いや人吉球磨への愛を語った単独インタビューも掲載いたします。
ぜひ一度、「人吉球磨アンバサダーズインタビュー」を覗いてみてくださいね。

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◇中原丈雄(なかはらたけお)profile
1951年熊本県生まれ。劇団未来劇場にて数多くの舞台を踏んだ後、映画・テレビ等の映像世界に移る。1992年「おこげ」にて映画デビュー。以後、映画・ドラマに多数出演。現代劇、時代劇問わず幅広い活動を行っている。俳優活動以外にも絵画で個展を開いたり、講演やトークなどにも出演。またプライベートバンド「TAKEO.UT・MEN」を結成し、ライブも行っている。山崎製パン株式会社「ゴールドシリーズ」のCMに出演中。

◇「人吉球磨アンバサダーズインタビュー」について
URL:https://ambassadors.hakutake.co.jp/
人吉球磨に所縁がある表現者たちのインタビューを掲載したwebコンテンツです。
各界で活躍する表現者の方々を、「アンバサダー(大使)」に任命し、インタビューを通じて人吉球磨がもつ価値や魅力を再発見していきます。