年末年始休業のお知らせ

2019年も残すところ、あと僅かとなりました。

本年も、弊社商品をご愛顧頂き、誠にありがとうございました。
2020年、高橋酒造は創業120年目を迎えます。社員一同誠心誠意努力し、これまで以上に焼酎造りを追求していく所存です。
2020年も、何卒よろしくお願い申しあげます。

尚、誠に勝手ながら下記の期間は年末年始休業とさせていただきます。

令和元年12月29日(日)~令和2年1月3日(金)まで
〔令和 2年 1月 4日(土)は営業いたします。〕

■「お客様相談室(お問い合わせメール)」へのお問い合わせについて
令和元年12月28日(土)正午から令和2年1月3日(金)までの期間にいただきましたお問い合わせにつきましては、令和2年1月4日(土)以降、順次ご対応させていただきます。

ご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。

よいお年をお迎えください。

The SG Shochu KOME 来年2月中旬発売(予定)のお知らせ

弊社ではこの度、世界中のカクテルコンペティションで数々の受賞歴を持つバーテンダー後閑信吾氏が率い、世界的なバーアワードでその店舗が上位に名を連ねるSG Group監修の元、「カクテル利用」を主目的とした本格焼酎“The SG Shochu KOME”を発売する事と致しました。
また、本件は「薩摩酒造(芋焼酎)」「三和酒類(麦焼酎)」「高橋酒造(米焼酎)」の3つの焼酎蔵元が参画し、SG Groupと共に国内外に「Shochu」の魅力を発信していくプロジェクトでもあります。
発売日は2020年2月中旬の予定です。どうぞご期待くださいませ。

■プレスリリース
https://www.hakutake.co.jp/apps/wp-content/uploads/2019/12/sg_pressrelease.pdf

■公式ブランドサイト
https://thesgshochu.com/

■公式Instagram
https://www.instagram.com/thesgshochu/

第181回 サンタの真実

赤鼻のトナカイたちのソリに乗って空中を飛んでいたのは、赤い服を着て髭をはやした肥った老人に見える。
サンタクロースと思うかもしれないが、実はちがう。
北欧にはオーガという、妖怪というか化け物がいる。ノルウェーやデンマーク、アイスランドにもいるが微妙に大きさや性格が違う。そして、サンタクロースの故郷であるフィンランドにもオーガがいた。毛むくじゃらで大男で、人間の子供の肉が大好きなオーガだった。
で、そのオーガが森に迷い込んだ人間の子どもを襲って食べようとしたときのこと。
逃げる子どもを追っていたとき崖から足を踏み外し、下へ真っ逆さま。気がつくとベッドの上に。
なんと、助けられて介抱されていたのだ。
命の恩人はサンタクロースだった。「やあ、気がついたか。心配したぞ」と。
オーガは感謝し、お礼を言い、なにか自分にできることはないかと。
だがサンタは首をふった。
「その気持だけで十分だよ。でも、もう子どもを襲ったりしちゃいけないよ。子どもは宝だからね」
その言葉で、助けてくれたのが、かの有名なサンタクロースだとオーガはやっと気がついたのだった。
サンタの教え通り、オーガはそれから子どもを襲わない日々を送っていた。すると、ある日、オーガの家のドアをノックする者がいる。サンタ工場の妖精だった。
実はサンタが急に倒れたとのことだ。クリスマス前の多忙期で無理がたたったらしい。
オーガが駈けつけると、サンタクロースは虫の息だった。オーガがサンタの手をとるとやっとサンタはやっとのことで目を開いた。
「おお。オーガか。頼みがある。クリスマスに私の仕事を代わりにやってくれんか。一夜だけのことだ。世界の子どもたちに私のふりをしてクリスマスプレゼント配ってくれ」
「そりゃ、だめだ。子どもを見たらオラぁ喰わずにはおれんだよ」
「そこをなんとか頼む。私はお前の命を助けたろう。子どもたちは皆、眠っている。そっとプレゼントを置いてくるだけだから」
それがサンタの最後の言葉となった。亡くなってしまったのだ。仕方なくオーガはサンタの赤い服を来て大袋にクリスマスプレゼントを詰め込む。
仲間のオーガたちは、それを見て大笑い。「似合わぬことをしないほうがいいぜ」と。
空飛ぶトナカイに乗り込み、オーガはクリスマスの夜空に飛び出したのだった。子どもを見なきゃ大丈夫だ。と、自分に言い聞かせて。
数万軒の家を訪ね、プレゼントを置くと、少しづつ自信もついていった。よし!使命を完遂できる!と。
そして明け方も近くなった頃に訪れた家でのこと。部屋に忍びこみベッドの横にプレゼントを置こうとした瞬間、明かりがついた。
「やあ、サンタのおじさん。本当にいたんだ」
オーガは仰天。見ると目を輝かせ、まるまると太った、なんとも美味しそうな子どもがオーガを見ている。
まさか、こんな事態は予想外だった。
子どもははしゃぎ声をあげ、ベッドを飛び出しオーガに抱きついてきた。そして、「サンタのおじさん毛深いんだね。牙まであるんだ。、これで友だちにサンタのおじさんは本当にいるって威張れるよ。みんな信じなかったから」とオーガの肩に這い登ってきた。その子の腕がオーガの口元に来たとき思わずペロリと舐める。美味しそうな匂いがオーガの鼻腔をついた。自然とよだれが出てくる。
もうたまらん、とオーガが子どもの腕に牙をたてようとするとサンタのいまわの際の言葉が蘇る。
「サンタのイメージを守っておくれよ(ガクッ)」
もうたまらん。我慢できぬとオーガは外に飛び出した。そして、ソリに飛び乗りフィンランドへ。
オーガはサンタの墓前で邪念を抱いたことを懺悔し報告する。と、サンタの幻が出現した。
「愚か者。まだ心の修行が足りん。クリスマスは来年もその次もずっとあるのだ。心を磨いて真のサンタに近づいてくれ」
 オーガはサンタの叱責に深く反省した。心がまだ未熟なのか。まだ一年ある。誘惑に負けぬ自分になってサンタの恩に応えなくては。
それからのオーガは日々座禅を組み、滝に打たれて、真のサンタになるべく修行に励んだ。そして次のクリスマス。
「これで子どもを食べたいという欲求を抑えられるぞ!」とオーガは拳を握る。オーガの精神は精神は新たな高みにたっしたのだった。
すると、何と赤鼻の空飛ぶトナカイたちがいない。どうしたのだ。
周りにいた仲間のオーガたちはデヘデヘと笑いを浮かべて言った。「うまそうなんで俺たちが喰っちまったよ」と。
だから、その年から空飛ぶソリがなくなった。この世の子どもたちにサンタのプレゼントは届けたくとも届かなくなったのである。本当に残念。
これが、サンタの真実。

弊社商品を装った詐欺にご注意ください

先般、弊社は、弊社の商品である「白岳しろ」を装った「しろ縁故債」なる私募債の勧誘が行われているとの情報を確認しましたが、「しろ縁故債」は、弊社とは一切関係がございません。
弊社としましては、このような状況は許しがたいことであり、対応を検討致しますが、皆様におかれましても被害に遭われないよう十分にご注意いただきますようお願い申し上げます(2019年11月29日)。

ホームページリニューアルに伴う過去のコンテンツ表示に関する不具合

弊社のホームページをご訪問いただき、誠にありがとうございます。
この度、当社ホームページリニューアルに伴い、一部機能がご覧いただけない状態になり、ご不便をおかけしていることをお詫び申し上げます。

現在、更新作業を随時行っておりますので、すべて完了するまでにしばしお時間をいただければと思います。

今後もより一層内容を充実させ、利便性の向上に努めてまいります。

第180回 松茸大作戦

私はキノコが大好きだ。形といい味といい、相性がいいというか、非の打ちどころがない。おまけに、日本人としての私に季節の移ろいを感じさせてくれる。春にはハルシメジ、夏にはヤナギマツタケやタマゴタケ、涼しい夜明けを迎えるようになるとハタケシメジが顔を見せるようになる。そして、いよいよ季節は秋。キノコ本格的シーズンを迎えようとしていた。
ムキタケやクリタケ、そしてナメコなど秋の美味しいキノコは枚挙にいとまがない。もう何年、秋のキノコ狩りを続けてきたのだろう。おかげで、どの山の渓谷のどの辺りに、湿度がどのくらいで気温がどの程度かというところで出かけると、お目当てのキノコが発生しているはず、ということもわかるようになった。
だが、やはりそれだけの経験を積んでも、採れないキノコがある。
松茸だ。
松茸だけは別格のキノコだと思う。芳ばしさもだが、ホイル焼きして日本酒に浸してもうまいし、松茸ご飯は極上だ。そして松茸の佃煮を茶漬にする。これはまさに日本に生まれてよかったと感謝する瞬間だ。松茸の天ぷらは贅沢極まりないと思うが、美味優先であれば挙げな
いわけにはいかない。
ただし、高価だ。
なかなか採れないということもあるし、人工的に栽培できない、ということもある。海外産松茸もあるが、香りがまったくなかったり、色も白っぽくて、とても同じ品種とは思えない。松茸とは別のキノコではないかと疑ってしまう。
時期も限られているのはもちろんだが、発生する松林の環境も関係するらしい。ある成長期の松林に発生しやすく、松林が一定の成長レベルを超えると、もう松茸は出なくなると聞いた。知人に松茸の発生する林を案内すると言われ連れて行ってもらった。急斜面の松林だった。そのあたりに松茸は毎年出るのだという。だが、私の目は節穴だったようだ。「ほら、ここに」と知人は私の目の前の地面に手を伸ばすと、ひょいと何かをつまみあげる。それは松茸。私には見えなかった。そんな捜しづらいキノコでもある。
ある日、キノコ犬の話を聞いた。フランスでは昔は豚を放ち、トリュフという地下のキノコを探させたようだが、今は訓練した犬にトリュフを探させるらしい。トリュフだけでなく、松茸も探すとい
う。これだ!
私は犬を買い、松茸の香料を嗅がせて日々訓練した。立派なキノコ犬だ。これで高価で珍味の松茸が食べ放題!だ。「さぁ、キノコの時期だ。これまでの訓練の成果を見せるのだ。」
ワンと、自信に満ちた声で鳴くと猛スピードで走り出す。その後を必死で追う。キノコ犬が一目散に駆け込んだ先は……。
全国チェーンの弁当屋の店先だった。その弁当屋の店頭では“秋の松茸ご飯キャンペーン”の旗がはためいてた。
へなへなと全身から力が抜けてしまった。
そんな話をすると、友人の生物学者が「いい案がある。松茸にも、ひょっとして使えるかもしれんな」
どうするんだ?と尋ねると友人は言った。「キノコは生物学上は真菌類という分類になる。で、私の研究は生命共鳴現象というものだ。遺伝子的に近縁の生命のDNAを組み合わせると互いを呼び合うようになる。高等生物ではだめだが、カビや菌の実験では成功している。で、キノコは真菌類だが実は人間にも関係のある真菌類があるんだ」「それはなんだい?」「タムシや水虫などの疥癬菌も真菌類なんだ。松茸のDNAを疥癬菌DNAと融合させ、君の足や股間に塗る。すると、
共鳴現象を起こし、松茸が探しやすくなるはずだ」「なるほど。でも痒いんじゃないか?」「いや、松茸を選ぶか、インキンタムシを選ぶかの問題だ。後でタムシチンキを塗ればいい。どうする?」
なるほど。「松茸を採りたい」
そして友人の生物学者は私に松茸DNAの疥癬菌を塗った。
何も起こらなかった。
そして秋。「凄い!」奇跡が起こった。生命共鳴現象だ。
もうどこにも松茸を探しに行く必要などなかった。
我が家の周りに、ぼこぼこと松茸が生え始めたのだ。
共鳴現象とはそういうことだ。松茸疥癬菌が松茸を呼び寄せている。これほど凄まじいい効果があったとは。
家の周りに密生する松茸をすべて採れば、どれだけの末端価格になるだろう。数十万円……いや数百万円。近所の連中が生えた松茸を採ろうとする。私は慌てて裸足で外に駆け出した。「皆、採るな!これは、すべて私の松茸だ」
これほどの強烈な生命共鳴現象が起こるとは、と思ったときは遅かった。
予想を遥かに超えた疥癬菌が、私の股間と足の先で爆発的に活動を開始した。
最初の一本の松茸を握ったときは、すでに私はその痒さに悶絶していた。

高橋酒造・三和酒類・薩摩酒造×BEAMS JAPAN「焼酎のススメ。」

BEAMS JAPANと本格焼酎のパッケージをデザインした創作あーちすと・のんさんが登場!!
高橋酒造・三和酒類・薩摩酒造×BEAMS JAPAN「焼酎のススメ。」

東京・新宿の店舗「BEAMS JAPAN」において2019年11月1日(金)から12月4日(水)の期間、高橋酒造株式会社、三和酒類株式会社、薩摩酒造株式会社とのコラボレーションで本格焼酎の楽しみ方を発信するイベント「焼酎のススメ。」を開催します。

「焼酎のススメ。」は、高橋酒造株式会社の米焼酎「白岳(白岳KAORU)」、三和酒類株式会社の麦焼酎「いいちこ」、薩摩酒造株式会社の芋焼酎「白波」のそれぞれの美味しさや奥深さに加えて、お酒がある時間の自由で楽しい過ごし方を提案するイベントです。
イベントの各コンテンツを束ねるアイコニックなイラスト、パッケージデザインは、創作あーちすと・のんさんが手掛けました。

「焼酎のススメ。」では、焼酎業界をリードする3社とBEAMS JAPANのアライアンスにより、若年層や海外からのツーリストなど、焼酎への馴染みが薄い方々へ向けて、焼酎そのものに加えてさまざまな飲み方や、スナックをはじめとした焼酎を楽しむ空間や時間の魅力を発信していきます。

■開催期間:2019年11月1日(金)~12月4日(水)

・BEAMS JAPANでのカップ焼酎と限定アイテム販売および特設コーナー設置
・オリジナルパッケージの「白岳KAORU」「いいちこ」「白波」カップ焼酎の販売
・<トーキョーカルチャートby ビームス>プロデュースの限定アイテムの販売
・特設コーナー「スナックびーむすじゃぱん」の設置
※場所:BEAMS JAPAN(東京都新宿区新宿3-32-6)

“のんママ”の「スナック びーむす じゃぱん」を舞台にしたWEBムービー「焼酎のススメ。」

「焼酎のススメ。」特設サイト
https://www.beams.co.jp/special/teamjapan/shochu/

白岳KAORU特設サイト
http://www.hakutake.co.jp/KAORU/

のんプロフィール
女優、創作あーちすと。
1993年兵庫県生まれ。 2016年公開の劇場アニメ「この世界の片隅に」で主人公・すずの声を演じ、第38回ヨコハマ映画祭「審査員特別賞」を受賞、高い評価を得る。 作品は同映画祭で作品賞、第40回日本アカデミー賞では最優秀アニメーション作品賞を受賞した。 2017年に自ら代表を務める新レーベル『KAIWA(RE)CORD』を発足。 シングル『スーパーヒーローになりたい』『RUN!!!』とアルバム『スーパーヒーローズ』を発売。 2019年6月ミニアルバム「ベビーフェイス」を発売 創作あーちすととしても活動を行い、2018年自身初の展覧会『‘のん’ひとり展‐女の子は牙をむく‐』を開催。

ホームページをリニューアルしました。

弊社のホームページをご訪問いただき、誠にありがとうございます。
この度、当社ホームページをリニューアルいたしました。
サイト構成を見直してデザインを一新し、スマートフォンなど使用環境に応じて、より快適にご覧いただけるようになりました。
今後もより一層内容を充実させ、利便性の向上に努めてまいります。

第179回 背後で響くもの

背後から「もしもし」と声をかけられた。振り返ると、男が立っていて私を見ていた。
「なんですか?」
「ご機嫌よさそうですね。鼻唄を口ずさんでおられる」
そう言われて、自分が鼻唄をうなっていたことに気が付いた。指摘されなければわからない。「あなたは?」と尋ねると男は微笑んだ。名刺をくれた。
それには〈人生に深みと感動を/企画〉の肩書。
変な名前の会社だなあ。そう思いつつ名刺を眺めていたら、男が言った。
「あなたにピッタリの商品をわたしどもの会社で用意しました。その商品のモニターになって頂けませんか。もちろん、無料です。耳で聞くだけ。人生に深みが生まれ、より深い感動を日々味わうことができます」
人生に深みと、感動……そして無料。断る理由は何もない。心の底で無料より高いものはないとかすかに感じたが。「では、お願いしましょうか」
「きっと満足されますよ」
男はイヤホンと腕に巻くベルトをくれた。
「お楽しみください。ベルトが感情を測定し、イヤホンに伝えてくれます。では、感想はまた」
男は去ってしまった。どんな音がイヤホンから流れるのかも教えてくれずに。ベルトを腕に巻いてイヤホンを聞けばいいのか?
イヤホンを耳に着けたが何も変化がない。ベルトを巻いた腕を振ってみる。こちらも変わらない。
歩き始めた。軽やかな行進曲が聞こえてきた。どこで鳴っているんだ?イヤホンだ。なるほど、歩くステップも軽やかだ。朝らしく気持ちいい。
いつもこのあたりで通勤に向かうきれいな女性と会うんだよな。毎朝のお楽しみだ。すると予想通りだった。いつもの可愛い女性が歩いて来る。私の心臓は少しときめいている。
すると、イヤホンのメロディが変わった。これは……この曲は知っている。ダスティ・スプリングフィールドの「この胸のときめき」だ。彼女はそんな私に注意を向けることもなく信号機を渡って見えなくなった。
もうすぐ、私の会社だ。いやだなあ。また課長に嫌味を言われるんだろうな。ノルマ果たしてないし。すると耳からメロディが。違う曲だ。今の気分そのものだ。何という曲だろう。
腕に目をやる。ベルトに文字が流れていた。「暗い日曜日」あ。ベルトに出てくるのは曲名なのか。ほんとに、暗い。足が重くなってしまった。会社に足を踏み入れようとするときまた曲が変わる。ベルトの表示は「亡き王女のためのパバーヌ」鎮魂曲じゃないか。
男がモニターとして私にくれたのは、バック・グラウンド・ミュージック装置なのだ。私の感情を腕のベルトが読み取り、その気持に一番適した音楽を再生するのだ。生活しつつBGMが流れてくる。
生の映画音楽と思えばいいか。映画も音楽が流れていないときいないときはあまり感じないが、楽しい場面で明るい曲が流れるとウキウキするし、怖い場面ではおどろおどろしい曲が流れてドキドキさせられる。
それを実生活でやる装置が開発されたとは。
それにしても気が滅入る。
そうか。このベルトを外せばいいんだ。と思って腕から取ろうとすると、ピタリと喰い付いて取れない!イヤホンも耳から外れない。
とほほだよ。どうしよう……。途方に暮れているとまたしてもメロディが。
森田童子の曲で「僕たちの失敗」が聞こえ始めていた。まさにぴったりではないか。
どうしよう。このまま会社に行くとどうなるのか。
突然曲が変わる。不安を煽るようなメロディだ。これは……「スター・ウォーズ」のダース・ベィダーのテーマではないか。
遠くから課長が歩いてくるのが見えた。だから、こんなメロディが聞こえるのか!ということは、この状態で仕事を始めたら、どんなBGMが流れてくるのだろう。
葬送行進曲?鎮魂曲?いや、ジョーズのテーマかもしれない。
これは緊急事態だと自分に言い聞かせた。こんな状態では仕事になったものではない。
今日は仕事をさぼろう。
慌てて木陰に身を隠し、課長をやり過ごすと一目散に、その場から走り去った。
会社から遠ざかるにつれて、聞こえるメロディも軽やかなうきうきしたものになる。ベルトの曲名はクライスラーの「朝の歓び」だった。そうだよ、これでいい。
これまでは気がつかなかったがBGMではっきりわかった。私にとって会社は大きなストレスなのだ。どうすればいい?
結論は一つだ。今までBGMなしでなんとかやってこれたのだ。このイヤホンとベルトさえなければ元の生活のリズムに。
「いかがですか?人生に深みと感動が感じられたのではありませんか?」
と突然現れたのはあの男だった。
「モニターはやめだ。元の人生に戻してくれ」
すると男は申し訳なさそうな顔をした。
「すいません。一度装着すると、まる一年はそのベルトとイヤホン、はずせないんです」
「えっ。じゃ、これから私の生活はどうなるんだ」
「実は新製品があるんです。この眼鏡を掛けて生活して見られませんか?世の中の真実が見えて、生活が楽しくなりますよ」
と、男は有無を言わせず眼鏡を私の顔に押しつけた。これも……取れない!!なんだこれは」
近くの自動車の窓ガラスを見る。おかしな眼鏡の私が写っていた。でも変だ。私の目の大きさが「点」になっている。ここ、れ、は!と思うと顔から幾つもの縦線が伸びた。さらに、頭の上に漫画文字が「ガビーン!」と浮かんだ。
「はい。BGMに加えて見るものにコミック表現効果を加えるんです。これでいっそう、あなたの日々の暮らしは奥深いものに」
男の頭上には「ニタ。ニタ」というコミック文字が浮かんでいた。

第178回 父のAI

日常では、あまり面と向かって父と話すことはなかった。ただ、私が子供の頃から父は何かあると呼びつけて口うるさく叱った。
私もいい年齢になり家族を持って両親宅の近所に住むようになったが、母から時々連絡があり説教されにいく。
内容は、孫がちっとも会いに来ないのは躾ができてないからだとか、言われなくてもときどきは庭の手入れに来たらどうだとか、よくもまあ重箱の隅をつつくような小言を繰り出してくる。母は元気が一番と、父のことは見て見ぬふりだ。
そんな父に変調が始まったのは、私を呼びつけて例によって文句を言っているときだった。ふと気がついた。私に小言を言うのだが、このとき何度も同じことを言う。「父さん、変だよ。さっきも同じことを言ったよ」と指摘すると怒り出した。帰り際に母にそのことを告げると、母は父を騙し騙し医者に連れて行ったようだ。母から電話がかかってきた。「初期の認知症だって。進行を遅らせる薬をもらってきて飲んではいるけど、進行を遅らせるだけで治ることはないんだって」
だからといって、私に説教をする習慣はなくならなかった。そして、症状はますますひどくなっていく。私を叱っている途中で、私の何に対して文句を言っているのか、自分でもわけがわからなくなり、それでまた癇癪を起こすという悪循環に陥ってしまいそうだった。
薬だけでは、とても解決できない。
父の主治医に母を連れて相談に出かけた。
「進行するともっとわけが分からなくなり、お父さんは自分自身にも腹を立てるようになると思います」「そうですか。いずれ、父は父でなくなるのですね」すると、主治医はある提案を持ちかけてきた。
「私の友人に人工知能の開発をやっているものがいるのですが、彼に聞いた話がお父さんに役立つのではないかと思います」
「どうするんです」
「お父さんの脳はどんどん萎縮していくと思います。そうなったときのためにAIつまり人工知能にお父さんの判断や思考を学習させ、お父さんが見聞きすることとお父さんの思考を論理を記憶させ、学習させます。お父さんの脳とAIを直結させるんです。そしてお父さんの思考をバックアップして保存します。すると、認知症が進行してもお父さんの脳に直結したAIがお父さんの思考を補佐するんです。いかがですか」
母親を見ると判断がつかないようだ。「手術は難しいですか?父とAIを直結するのは」
「いえ。簡単になってますよ。首のところに繋げるようにするだけのようですから。それで脳の働きをAIが読み取るのだと聞いています」
これ以上、ほっておいたら父の痴呆は進行し、壊れていくだけのように思えた。
「お願いします。それで話を進めてください」
その頃は父も足が不自由になり寝たきりの生活になっているのも幸いした。麻酔を与え、父が眠っている間に首筋にコードを取り付けてAIに繋ぐことになった。父が怒ることも想定したが「これは物忘れしないようにする機械だからね」と母が説明するとAIをおとなしく受け入れたようだた。
AIには前もって私や母が、父の行動や知識についてわかるだけ教え込んでいた。だから、父がなにか話そうとして、話に詰まるとAIが補佐して欠落した知識を埋めてやる。そして父の話がスムーズに修整される。それが父のストレスを緩和しているようだった。
父の痴呆状態が劇的に治癒しているように見えるのは、母にとっても私にとっても嬉しいことだった。そのせいだろうか。ストレスが減ったのか?父が小言を言う頻度も減ったように思えた。いや、認知症状態が治っているわけではなく、父が忘れている部分をAIが補っているだけなのだが。
そう。父は常に呆けているわけではなく、まだら模様のように頭がはっきりしたり、呆けたりを繰り返す。はっきりしたときの父からAIは情報として取り込んでいることもわかった。
一度、近くで落雷があり、わが家が停電したことがあった。真っ暗な中、母に呼ばれて駆けつけ、父が大丈夫か話しかけて父の本当の容態を知ったのだ。父は会話をするにもあらゆる面で認知症が進行していた。私の呼びかけに答えられないほど。
もちろん、AIが止まってしまっていたからわかったのだが。
その父が、心臓の急変であっけなくこの世を去ってしまった。母が気づいて救急車を呼んだときは、すでに手遅れの状態だった。
父を送るすべての行事が終わったあとに残されたものは、父の受け答えをずっと補助してきたAIだけだった。
人工知能を開発した父の主治医の友人に連絡をとると、すぐに引き取りに来てくれた。
「お父様の思考をかなりこのAIは学習しましたね。最後はお父様に代わってほとんどのことを答えていたようです。元気なときのお父様で最後までおられたでしょう」
そう言われてみればその通りだ。
「では、データすべて消去しておきますね」
「待ってください。その補助装置としてのAIはどうなるのですか?他の方に使われるのですか?」と母が真剣に尋ねる。

母に呼ばれて実家に行く。座敷にはロボットが座り、その頭には見慣れたAIがある。AIは聞き覚えのある口調で私に小言を言う。庭の手入れ、孫の躾……。
お茶を持ってきた母は、その様子を見て嬉しそうだった。「まるでまだお父様元気なようで」
私は肩をすくめる。これはこれで母にとっては幸福な結末かもしれないと。