カジシンエッセイ

第73回サンタを信じる年齢

2010.12.01

私の幼い頃から、クリスマスという習慣は、ありましたな。幼稚園でクリスマスツリーの紙飾りのついたお菓子をもらった記憶もあります。
で、サンタクロースの話も知っておりました。サンタはソリに乗ってやってきて、煙突から室内に侵入……いや入ってこられる。
真っ赤な服を着ている。そして良い子にだけプレゼントを置いていく。
 今の情報とほとんど変わりません。
 ただ、子供心に心配はしておりました。我が家は典型的な日本家屋なので、五右衛門風呂に小さな煙突が一つあるだけ。そんなところから入ってはこれない。入ってきても、室内には入れない。焚き口も外にありましたから。じゃあ、どこから入ってくれるんだろう。
 そして、うまく室内に入ってこられたとして。プレゼントは靴下に入れていくということだけれども、子供の靴下の大きさなどタカがしれています。自分が欲しいものと靴下の大きさを比較して不安になっておりました。

われながら可愛いものです。たぶん幼稚園の頃までは確実にサンタクロースを信じていたようです。
 ただ、特殊な事情はありました。私の誕生日は、12月24日です。つまり、サンタのプレゼント、イコール誕生日プレゼントなわけで……。つまりプレゼントひとからげ!
 何と、不幸な星の下に自分は生まれたのだと嘆いておりましたよ。
 さて、孫がいるのですが、いつからサンタを信じなくなるのか、もの心つく頃から観察を続けています。
 小学校に入ってすぐの頃の反応。
「今度はサンタさんに、ゲームソフトで欲しいものがあるから、紙に書いて貼っておく」
 もう、それだけで「こいつは親へのアピールで、すでにサンタの存在を信じていないな」とわかります。家族のために、サンタを信じている子供を演じようとしているのが見え見えなのです。
 娘に孫が言っておりました。
「いま、サンタさんは考課しているところなのよ。いい子だったか、言うことをちゃんと聞いて守ったか、勉強をちゃんとやったか」
 それを横で聞いていて、思わず私も口を挟んだものです。
「そうだ。ママの言うとおりだ。
 実は、おじいちゃんのとこにもサンタさんからアンケートが来たんだ。お宅のお孫さんは、いい子でしたかって!
 ハイだったら、望みどおりの素敵なプレゼントをお孫さんに進呈します。
 イイエだったら……サンタが拐かすって。トナカイと一緒にソリをひかせる。
 ハイでもイイエでもない。どちらとも言えない……のときはコンビニの長靴入りのお菓子詰め合わせクラスのプレゼント。そう書いてあったなあ。
 実は、まだ返事を出してないんだ。どれに○を書いてだそうかなあ」
 孫は、口を尖らせて言いました。
「ちがうよー。クリスマスプレゼントはパパが夜中に持ってくるんだから、いいかげんなこと言わないで」
 なんと現実主義の子供だと呆れたのが2年前のこと。
 で、昨年はというと……。
 孫は、もっと狡猾に成長していたのであります。
 孫は、娘に「クリスマスはサンタさんに○○のゲームソフトが欲しいって伝えて」と言ったらしい。それまでは、旧作ソフトばかりで安上がりに済んでいたのが、新発売の高いゲームソフトになったそうです。
「知らないよ、私はサンタさんに連絡する方法も知らないし」と娘が答えると、孫は、なんともわざとらしく、天井に向かって大声で、
「クリスマスに発売される○○というゲームソフトが欲しいです。サンタさん、サンタさん。○○というゲームです」
 そう、何度も何度も連呼したそうです。おかげで、そのゲームソフト名はいやでも覚えてしまったと。
 サンタを信じていないくせに、その手段からして、孫は確信犯だと思います。
 私の幼い頃の、一番大きな靴下を探しまわった純心さは、今の子供たちには、もうないのだろうなあ。
 結局、孫のクリスマスプレゼントは私が買い与えたのですが。
 さて、今年のサンタプレゼント。孫はどんな手を考えているのでしょうか?

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