カジシンエッセイ

第59回「地獄に堕ちるぞよ」

2009.10.01

くじゅう法華院温泉から坊がつる方向にUFOを目撃したり、波照間島の公衆便所で作業着を着た異星人グレイと遭遇したり(この白岳ブログのバックナンバーで、そのエピソードの詳細は知ることができます)と波瀾万丈の人生を送っている知人のことを、よく訊ねられるようになりました。それほど印象に残るユニークな人物ということでしょう。
「最近、その人には会ってないのですか?面白いできごとはないんですか?」と。

あります。

しかし、そんなエピソードばかり披露して、皆さん面白いのだろうか、とも不安になるのでためらっていましたが、「続き読みたいです」と直接言われた方が5人を超えたので披露申しあげることにしました。

ご本人のことを再度、記しておきます。
50代。独身の男性です。優雅に自己所有マンションで一人暮らししています。熊本では、そこそこ名の知れた企業で経理及び総務を担当しています。外見は、一般人です。

会ったとき、開口一番、彼は言いました。
「この間、カジオさんと会ったでしょう。それからうちに帰ったんですよ。そしたら、後ろから幽霊が追いかけてきて。エレベーターに乗ろうとしたとき。待っていたんですねぇ。建物に入った瞬間、妙な感じがしたんですよ。なんか、ぞーっとする感じ。すると、エレベーター待っていたら、右後ろにいつの間にかそいつがいるんですよ。入ってきた気配はないですええ。女性ですよ。ちらっと振り返ってわかりました。それから、背中のぞーって感じが続くんです。それで、エレベーターが来たら、私だけ飛び乗ってあわててドアを閉めました。そしたら素早くいつの間にか私の後ろに乗ってるんですよ。わかりますよ。背中ゾクゾクするもん。
部屋の階に着いたら飛び出して、「あっち行け!」と叫んで、あわてて出入り口に盛り塩して布団に潜り込みました。
「生きた心地がしませんでしたよ」
 ぼくは「それって普通の女性じゃないんですか?マンションの住人とか。」と指摘したのですが、彼は「そういうことはない」と断固として否定しました。
「アレが幽霊だということは、一緒にいただけでわかります。カジオさんだって、すぐにわかりますよ」
 波照間の作業着宇宙人も、いまだに私は彼の思い込みにちがいないのではないか、とも考えています。目玉のでっかい現地の人に遭っただけではないか、と。
女の人が帰宅してエレベーターに乗ろうとすると、中年男が前でなぜか震えている。エレベーターが来ると、中年男はあわてて中に飛び込み、ドアを閉めて上がっていっちゃった。でも気持ち悪い人だったから、同じエレベーターに乗らなくてよかったワ。
そんな感じではなかったのだろうか。だがひょっとして、女の人は彼が主張するように本物の幽霊なのかもしれないが、わかる筈もありません。

あとは「カジオさん。シナモン食べた方がいいですよ。シナモンで私、体質を改善しました。もう、ご飯やらパンやらお酒やら、全く食べちゃいけないんですけど、毎日シナモンをとりました。お茶やら紅茶やらコーヒーやら牛乳やら何にでもシナモンかけました。おかげで、ピンピンです」
そこいらは、よくわかりません。彼の信じている健康法が功を奏しているのであれば、何よりではないでしょうか。

最近の彼の興味は2012年問題。今だに続いています。(これも今年の正月にこのブログで紹介しましたよね。憶えておられますか?)
フォトンベルトの中に人類が入るそのとき、進化する人と淘汰される人が出てくる。そう主張している彼です。そして近頃は、こんなことを。
「カジオさん。そのとき人類の選別があるという話は知ってますよね」
「ああ。何度も言ったし、聞かされましたよ」
進化といっても精神的進化ということらしい。
「カジオさん。どうやったら精神的に進化するか知ってますか?」
「知りません」
「教えましょうか?」
「お願いします」
「わかりました。教えましょう。ご飯を食べるとき27回噛むといいそうです」
「噛まないと、どうなるんですか?」
「さもないと、地獄に堕ちるぞよ…。そう書いてありました」
「そうですか!」

驚きました。何の本だろう。

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