鋸作りにはドラマがある! |
2011.10.28 |
九州でも、いや全国でも唯一という“鋸鍛冶師”が熊本県人吉市にいる。『鋸刃物鍛冶 岡秀』の二代目・岡正文さんがその人だ。
最盛期には年間3千丁もの注文があったという「手曲がり鋸」だが、林業の衰退やプレスによる大量生産、チェーンソーの普及などにより減少し、熊本に6軒あった鋸鍛冶屋もここだけになった。ホームセンターなどでも簡単に手に入りそうに見える鋸だが、比べて見れば明らかに違う極められた“業物”がここにある。
刃先に目を近づけると一目ずつ左右に振り広げられ、それぞれに微妙な角度が付けられる等々、実に巧妙な技が施されている。鋸鍛冶は、焼けた鋼板を鉄の槌で叩き強度を高める“鍛造”から形成、目落とし、荒目立て、焼入れ、焼き戻しなど17もの工程を経て作られる。中でも「これが出来なければ鋸鍛冶にはなれない」というのが“歪み取り”と“目立て”だ。作業工程ごとに生じる歪みやねじれを「歪みヅチ」などを使い折り合いをつける。
どこをどう叩けばいいかは、まさに経験が物をいう。少しずつ歪みを直し、長い時間をかけて作り上げられた鋸は、感動を覚えるほど美しい。「なんだか美術作品のようですね」と伝えると「いやいや、ただ木を切るための道具だよ」と岡さんは笑う。全国でも唯一となった鋸鍛冶師だが、息子である敬志さんが3代目として後を継ぐそうだ。
複数の工程において細やかな作業が伴う鋸鍛冶を「鋸作りにはドラマがある!」と2代目岡正文さんは力強く語る。衰退の一途を辿る鋸鍛冶だが、ここには伝統が受け継がれる光があふれている。

『鋸刃物鍛冶 岡秀』
●営業時間/8:00〜18:30
●定休日/不定休
■アクセス
人吉市上青井町127
電話 0966-22-3824








